府立洛南病院院長吉岡さんと、医療観察法病棟についての話し合いをして | キーサン日記

府立洛南病院院長吉岡さんと、医療観察法病棟についての話し合いをして

 2023年4月21日の15時から、たっぷり2時間、府立洛南病院院長の吉岡Dr.と院長室で話し合いを行いました。前進友の会・やすらぎの里からは代表のくごうちゃん、えばっち、たなやさん、私、そしてライターの浅野さんの五人が行きました。

 

 今回は、吉岡院長から、医療観察法病棟について、病院内でセンシティブな話し合いが行われているので、団体交渉という形式は止めて欲しい、院長個人としてなら話し合いができるし、感想についても公表してもらって構わない、ということだったので、今回、我々はその立場を受け入れて、実のある話し合いをすることを選びました。

 

 院長自身は、もともと、医療観察法案にも反対していたし、いまも、『精神医療』誌などで、法についても問題提起をしている、ということでした。

 

 現在洛南病院は256床で、医療観察法病棟は十数床を作ることになっている、とのことです。

 我々の今回の主要な関心は、医療観察法病棟を作るにしても、どういう運営をしていくつもりなのか、ということでした。

 

 具体的には、クロザピンの使用については、かなり肯定的な感じを受けました。ただ、こちらからは、クロザピンを使用している病棟の割合が指定医療機関は五割、一般精神科では三割と差があり、これも専門病棟での長期入院の原因になっているのではないか、そもそも、クロザピンは白血球が急激に変化する副作用があり、命に関わる副作用があるので、使っても良いのかという問いかけをしました。

 

 m-ECTについては、継続的に使う物ではない、という院長の見解でした。現在洛南病院では1年に0回~100回程度行っているということです。ただ、吉岡院長自身は、あまり、m-ECTに積極的ではないような印象を受けました。

 

 内省療法については、吉岡院長も、私も必要性はよく分からない、対象行為に直面させることは、私は疑問だ、と言っていました。

 

 吉岡院長も持論があるだろう医療と司法の関係について、訊きました。

 

 吉岡院長は、医療も司法も独立に必要で、どちらもうまく機能するべきだ、という考えで、それは我々もその通りだとは想うけれども、むしろ、今の状況は、医療と司法の連携が恐ろしく行き過ぎている、というこちらの考えを伝えました。

 

 それは、検察官通報などで、通常なら逮捕されてからしばらくすれば釈放されるところを、無理矢理措置入院にされたり、医療観察法審判には、時効も一事不再理も控訴権もない、むしろ医療の名の下で精神病者に対する司法を完全に補完している、ということです。

 

 ただ、吉岡院長は「控訴権」はあるだろう、と発言し、おいおい、本当か?ということになりましたが、処遇改善申し立てはできても、控訴をしたという話は寡聞にして聞いたことがないので、吉岡院長の勘違いなのではないか?という話になりました。

 

 吉岡院長は、審判医も鑑定医もどちらの経験もあり、審判医は今まで5回以上やったことがある、とのことでした。それでも、法的なことはあやふやな印象を受けました。

 

 PSWについては、現在八人しかいない、また地域連携室というのは無くて、基本的に病棟に張り付いている、とのことです。その理由については、京都府の予算的措置に原因があるとのことでした。

 

 この現実については、吉岡院長も危機感を感じているらしく、なんとか、PSWには病棟の外の地域へでて、PSW相談室もオープンにしてやらないと、何のためにPSWが居るのかということになるので、口を酸っぱくしてPSWには言っている、とのことでした。

 

 専門施設ができるのなら、なおさら、PSWが実質的に動かないと、対象者が地域へ戻れない、という問題意識は共有できていると想います。たなやさんも、自分の経験からPSWが動けることがとても重用であり、医者もPSWも検察やマスコミの主張を鵜呑みにしてはダメだと、おっしゃっていました。

 

 残った時間で、吉岡Dr.の個人の考えとして、どうしたら、日本の精神病院の病床を半減することができると想うか、ということを訊きました。

 

 まず、認知症患者を閉じ込めないようにすること、50代以上の老化してくる病者の生活のしにくさを手当することが必要で、病棟を小さくするしかない、との考えでした。

 

 その、答えを受けて、えばっちが自分の考えとして、精神科の有床のクリニックを作る努力が必要ではないか、と話しました。大病院から独立して開業する医者は多いが、精神科の場合はほとんど有床のクリニックを試みない、有床のクリニックがたくさん増えれば、単科の私立精神病院の多くの病床は自然に必要なくなるのではないか、との考えを話しました。吉岡さんも、もうすぐ洛南病院を退職するのなら、第二の人生として挑戦してみたらどうや、と伝えました。

 

 吉岡院長も、その方向性自体は正しいと想うと同意しました。ただ、院長を退職したら、もうそんな元気は残っていないだろうけれど、と言っていました。

 

 全体として、こちらが言いたいこと、懸念していることは、吉岡院長には伝わったと想います。そういう意味では実のある良い話し合いでした。また、個人的にでも、我々と話し合いの場をもてるとありがたいと、想いました。ただ、2時間ぶっ通しの話し合いは、みんな、とても疲れました。

 

                         前進友の会  皿澤 剛